会社勤めをしている方の多くが楽しみにしているはずの賞与(ボーナス)。
賞与を励みに日夜働いている人も多いでしょうが、そもそも賞与とはその人の働きによってもらえる報酬であるため、中には自分のそれまでの仕事がその賞与に値しないと考え、受け取ることをためらうような謙虚な方もいることでしょう。
もしそのような時、自分に値しないという理由で賞与の受け取りを辞退することができるのか、今回はその点について話していきましょう。
賞与の受け取り拒否ってできるの?
まず気になることとして、そもそも賞与の受け取りを拒否できるのかということですが、これは結論から言うと可能です。
そもそも賃金(賞与を含む給与)とは、労働者が労働の対価にもらえるものとして強く保障されているものであるため、一見、会社としても「支払わない」ということは許されないようなものと考える人も多いでしょう。
しかし実際には、社員自らの意志で明確にその給与の受け取りを拒否している場合は、会社側の責任を問われない可能性が高いため、詳しいところはケースバイケースという判断になっていきます。
よって、自分の仕事が賞与を受け取るに値しないと考えた社員が、「その賞与の受け取りを辞退したい」という事例については、社員がその旨をきちんと会社に伝え、またその意志を証明するものが存在すれば、十分可能であると述べることができます。
ただ、一点だけ気をつけたいのは賞与の受け取り拒否にあたって、二つの法的意味があります。
ひとつは冒頭で述べたように「自身が賞与に値する仕事をしてきていない」ことですが、もうひとつに「賞与の金額に納得していない」という意味合いもあることです。
あくまで前者、自身の仕事に納得していないという理由であれば、しっかりと『辞退』という名目で、その意志表明をきちんと伝えておく必要があります。
賞与の受取辞退はどうやってするの?
実際に賞与の受け取りを辞退するにあたって、やはりまずは自分の上司、もしくは会社の人事部門の方に先に口頭で相談を行った方が良いでしょう。
もちろん意志の証明として文書に起こす必要はあります。
しかし、事前に何の打ち合わせもなく文書だけを急に渡されても、本人としては充分であっても、会社としてはいろいろと手順が必要です。
ですので、まずは直接辞退したい旨を伝える方が良いでしょう。
そしてお互いの合意が取れたうえで、一般的には会社の指示に従って文書を起こすという流れになります。
まとめると、賞与の受け取りを辞退するための具体的な方法としては、
- 会社の上司もしくは人事部門の方に直接辞退することを相談する
- その際に自分の仕事が賞与を受け取るのにふさわしくないからという辞退の理由を明確に伝える
- 相談で合意した内容、また会社の指示に沿って辞退の意志を示す文書を起こす
このようにしっかりと手順を踏めば、まず賞与の受け取り辞退を認めないという会社もないはずです。
賞与を辞退したい時に使える文例をご紹介
では、文書に起こす際にはどのように書けば良いのでしょうか。
ざっくりまとめると、
- 依頼したい事項(賞与を辞退したいこと)
- その理由
- 締めの言葉
この順番をおすすめします。
具体的な文例は下記の通りです。
○○部 ○○部長殿 日付 ○季賞与の支給見合わせについて (※まずは依頼内容をわかりやすく表題にします) 表記について、下記の通り依頼いたします。何卒ご理解賜りますようよろしくお願いいたします。 記 令和○年度○季賞与の給付を辞退したく、支給の見合わせを依頼いたします。(※依頼内容を簡潔に、明確にまとめます)
理由は、自らの力不足、努力不足により部門内において地位に見合った業務を遂行できていないためです。 (※問題は自らの能力が賞与に値しないことをしっかり伝え、賞与額に不満があるわけではないことを示します)
異例の依頼とは思いますが、何卒趣旨をご理解の上お願いいたします。 (※不快にならないよう、丁寧な依頼の言葉で締めくくります)
以上
○○部 氏名 印 |
ただし、前述したとおり、まずは会社側と相談をしてお互いに合意したうえで文書を起こすはずですので、会社から指示がある場合は、基本的にはその通りに文書を作成して下さい。
まとめ
このように、会社で仕事をしている人は給与をもらう権利があると同時に、給与を辞退する権利も基本的にはありますので、もし賞与をもらうにあたって自分の仕事に納得できていない時は、手順さえ踏めばそれを辞退することもできます。
ただ、一つ覚えておいていただきたいのは、賞与とは会社からの査定によって、それに応じた報酬がもらえるという面です。
つまり、その額に不満があるというわけでなければ、それだけの価値を会社から認めてもらっているということです。
もちろん自分の仕事にもったいない報酬を辞退したい、という考え方はとても謙虚で立派な心構えです。
ただ、忘れていけないのは、自分にそれだけの価値を与えてくれている存在があること、それだけ期待されているということです。
あくまで一つの考え方ですが、賞与を報酬としての意味だけでなく、会社からの自分への『投資』だと捉えるのはいかがでしょう。
そうなると、投資してもらった額に見合う人材に成長していきたいとは思いませんか?
賞与を辞退するか、受け取った賞与にふさわしい人材になるべく努力を重ねるか、それはその人次第になります。
どうせなら自分自身を賞与に貰うにふさわしい、納得できる仕事をしていけるよう(筆者自身も)日々成長していきたいところですね。